藤原清道プロフィール
12第二創業期~クレド経営との出会い~
かつては、利益とキャッシュだけを追いかけ、その結果として業績や従業員の給与も右肩上がりに上がっていった。今となっては恥ずかしい限りだが、当時の私は事業経営の目的は「利益とキャッシュを増やし続けること」だけであると信じて疑わなかった。金儲けがうまくいけば、人生すべてはうまくいき、何もかもが手に入ると考えていた。従業員にとっても、それ以上のしあわせはないだろうと思っていた。
しかし、利益を追うあまりに大切なものを見失い、多くの従業員に愛想をつかされることとなった。
お客様の数も、お客様がお支払いくださる単価も増え続け、財務諸表で示される結果は好調極まりなかったが、その成績に反比例するようにして社内の空気は重苦しくなった。
経営陣を除いたほとんどのスタッフから愛想を尽かされた。カネでは人の心は動かせず、また誰も幸せにしないというあたり前すぎることを、この時に痛感した。仲間たちの忍耐や苦悶の結果として儲けたお金には、なんの意味も価値もないことを思い知らされた。
ベンチャービジネスを立ち上げた当初に思い描いた会社は、こんな会社ではなかったことに遅ればせながら気づくことになったのだ。
学生時代の成功体験には、必ず仲間たちの笑顔があった。仲間たちの笑顔のために尽くすリーダーこそが、自分の理想とする姿ではなかったのか。創業当初、寝食を忘れて金儲けに邁進したのも、仲間たちと一緒に全員が笑顔で輝く組織にしたいという思いが底流にあったからなのだが、いつしか手段が目的化したことに気がつくこともなく、愚かな自分が暴走していたのだった。
そこから私の経営者としての第二創業期が始まる。それまでの考え方をゼロリセットするところからやり直すことを決意。
究極まで悪化した社内の雰囲気。
捨てゼリフと共に去っていくスタッフ。
反抗的態度を改めようともしないスタッフ。
やる気なく暗い雰囲気で最低限の仕事しかしないスタッフ。
その全てを作り上げたのは、他の誰でもない私自身であることを認識して再スタートした。
事業経営の本質に立ち返り、考え直し学び直すチャンスをいただいたのだと自分に言い聞かせた。利益もキャッシュも重要ではあるが、利益もキャッシュも手段に過ぎない。事業経営の本質は何かということを、来る日も来る日も考え続けた。
その間も、お客様への価値提供を最大化するということからは一切逃げることなく、ただ利益を上げるのではなく、何のためにお客様へ価値提供をし続けるのかを考え続けた。
しかし、それまで利益やキャッシュのことしか考えてこなかった私にとっては、事業経営の本質から一歩も逃げずに向き合っていくということは、なかなか苦しいことだった。それでも、もう二度と組織を崩壊させたくないという思いと、仲間をしあわせにできないビジネスのやり方には二度と携わりたくないという強烈な思いが、私の脳に深く刻まれ、その後の強い行動を生み出したのだ。
近年、従業員満足度や従業員エンゲージメント、働きがいややりがいを高めようとする企業が増えてきたが、それらを業績向上のための手段として考える企業に対して強い違和感を覚えるのは、こうした私自身の経験によるところが大きいのかもしれない。
それまで一切学ぶ必要もないと思っていたマネジメント関連の本を読み漁った。さまざまな企業にも訪問して、経営者としての在り方や考え方を学び続けた。
その中で出会ったものの一つに、「クレド」というものがあった。ザ・リッツ・カールトンホテルを始め、さまざまなクレドを活用している企業にも訪問し、経営者の考えを聞くだけでなく現場スタッフの生の声にも触れた。
「みんなが楽しく働けて、みんなが輝ける組織をつくる」プロセスでは、クレドが大きな役割を果たすだろう。そしてクレドのある組織から生み出される商品やサービスが、お客様にも大きな価値をお届けしていく。
そう確信してクレド経営をキックオフ。
組織が崩壊して1年。2008年(平成20年)4月。すでに事業の創業から10年以上が経過していたが、ここまでの10年の失敗と試行錯誤があったからこそ、カタチだけではない本当に結果が伴うクレド経営ができるようになったのだと思う。
そして、今になって振り返ってもうひとつ思うことがある。それは、この頃に経営の現場で起こるあらゆるイレギュラーに一切動じない、経営者としての強靭な体幹がつくられていたということ。
うまくいかないことがあっても、失敗して大きな痛手を負ったとしても、安易なテクニックに頼らず即効性のあるものを求めず、長時間思考と大量行動を積み重ねてきたことで、「知力だけが高い有名企業のコンサルタントとはぜんぜん違う」というご評価を、お客様からいただけるようになったのだと思う。
- 目次
- 00プロフィールトップ
- 01私心なき経営~力なき人間が挫折を経て夢を追う~
- 02少年時代~強い組織を支えている人の存在を意識~
- 03落ちこぼれの高校時代~底辺を味わいながらも成功体験も~
- 04経営という仕事との出会い~自らの力で社会を渡り歩く魅力に取りつかれる~
- 05会社員経験~バブル崩壊直後の大手子会社で学ぶ~
- 06会社創業期~いきなりの挫折 惨めな船出~
- 07戦略なきドブ板営業~そこから繋がるディープな世界も~
- 08地方行脚~祖母の自宅に転がり込む~
- 09ミラノ出張~911の直後に国際線に搭乗する~
- 10上昇気流~大きな爆弾を抱えていることに気づかずに進む~
- 11組織の崩壊~従業員満足度への目覚め~
- 12第二創業期~クレド経営との出会い~
- 13クレド開発から導入、そして実践~粘り強さが作り上げたもの~
- 14マイクレド~自律自走の本質を知る~
- 15日刊メルマガの発行~ダメな自分を躾けていく最高のツール~
- 16従業員満足度研究所の立ち上げ~自らの事業経営の意義を見出す~
- 17コンサルティング事業~一般的なコンサルの常識を破壊する~
- 18従業員満足度実践塾~コンテンツの質を落とさずに、格安で学ぶ場を提供~
- 19子育てと教育~本質は、従業員満足度を高める組織づくりと同じである~
- 20「新 従業員満足度ES2.0」の執筆~日本企業の未来のために使命感を持って取り組む~
- 21クレド開発・浸透支援事業~組織づくりに悩むすべての企業に貢献する~
- 22後進の育成~日本の隅々まで、従業員満足度を高める経営を浸透させるために~
- 23生涯現役~働くことで人生が豊かになり、人間的成長ができると確信~