
― 表現の自由と組織内の配慮のバランスについて ―
数ヶ月経った今だからこそ、冷静に見つめ直す
マルちゃんの「赤いきつね」のCMが、「性的で気持ち悪い」「いやらしい」といった理由で炎上したという話題がありました。あの一件は、2025年2月上旬に起こったものですので、すでに数ヶ月が経過しています。
当時はSNSを中心に多くの議論が巻き起こり、「あの演出は不快だ」「女性の仕草が性的すぎる」といった声が目立ちましたが、今あらためて、少し時間が経ったからこそ、冷静に見つめ直し、客観的にこの現象を考えてみたいと思います。
CMの内容をご存じない方は、こちらに貼っておきますのでご覧ください
CMを見て感じた率直な印象と考察
正直なところ、私は基本的にこの手の話題にはあまり関心を持たないほうなのですが、企業が自社の広告活動で炎上してしまうのは決して好ましいことではありませんし、そこから学べることがあると感じて、一度見てみることにしました。
私個人の率直な第一印象としては、「大きな問題があるようなCMとは思わなかった」というものでした。ただ、だからといって批判的な感情を抱く人の感性を否定するつもりもありません。このCMに不快感を覚える方がいるということも、十分に理解はできます。
演出を考えた方は、露骨な性的表現をしようとしたのではなく、むしろ「ターゲット層に刺さる表現とは何か」を突き詰めた結果、この形に至ったのだと思います。偶然ではなく、ある種の“狙い”があったことは間違いないでしょう。女性をこのように描くことに、意図がなかったとは言いづらいわけです。
表現の自由と批判の受け止め方
とはいえ、そうした演出を一律にNGとするのであれば、世の中のクリエイターの表現の幅は極端に狭くなってしまいますし、それが良いことだとは思いません。現代の価値観に照らしても、私はこのCMが問題だとは感じませんでした。
「赤いきつね」の製造販売元である東洋水産も、この件について公式に謝罪することもなく、現在に至るまでCM動画は削除されずに公開され続けています。つまり、企業としても「問題なし」と判断しているのでしょう。
このような現象は、いわゆるノイジーマイノリティの声が過度に拡大されて見える「見せかけの炎上」である可能性もあると私は思っています。実際、大手芸能事務所や大手メディアの不祥事のような「本物の炎上」とは明らかに違う空気感があります。

映像表現とジェンダー批判の関係性
この赤いきつねの炎上騒動をきっかけに、過去のアニメ作品にも「あれも気持ち悪かった」と声が上がるようになりました。その代表格が、新海誠監督の作品です。
大ヒットした『君の名は。』も、一部の視聴者にとっては「気持ち悪い」と感じさせる演出があるという声があります。物語の本質に直接関係ない部分で、女性的な表現が過剰に強調されていたという指摘です。
私自身はそれほど違和感を感じませんでしたが、「気持ち悪さ」を感じた方々の言い分も、想像してみれば納得できるところはあります。そして、そのような演出に対して現場で誰も指摘できなかったのではないかという空気感も、想像してしまいます。
こういった意見が表に出てくるということ自体、時代の価値観の変化を象徴しているのだと思います。
社外対応と社内配慮の境界線
私の考えとしては、今回のCM動画にも新海作品にも、個人的に大きな問題は感じていません。しかし、演出に対して「気持ち悪い」と感じる感性もまた、尊重されるべきだと思っています。
では、こういった場合、企業としてどのような対応が望ましいのでしょうか。
まず「社外」に対しては、想定している顧客層に不快を与えない範囲であれば、表現のスタイルは貫いて良いと考えています。東洋水産がCM動画を削除せず、コメントも出さないという対応は、その意味では的確だったと感じます。
一方で、「社内」に対しては別の視点が必要です。

組織文化におけるジェンダー配慮の重要性
私の会社では、従業員の男女比がほぼ半々です。そのような環境では、無自覚に起こる男女間のトラブルを未然に防ぐ配慮が欠かせません。特に、性的なニュアンスを含む表現ややりとりについては、最大限の注意を払うべきだと考えています。
「気持ち悪い」と思わせてしまうような接し方、話し方、言葉遣い。そのすべてにおいて、「自分は悪気がなかった」では済まされない場面があるという認識が必要です。
たとえば私自身も、女性社員と個人面談をしたり、必要に応じて食事を共にすることもありますが、その際は「相手に少しでも性的な不快感を与えないように」と強く意識し、人間として敬意をもって接することを心がけています。
安心して働ける職場づくりとは
「個室での面談は避けるべき」「異性と2人きりでの会食は控えるべき」といった意見があるのも分かりますが、それはあくまで対処療法。本質的には、日々の振る舞いそのものに誠実さと配慮を宿すことが最も大切だと思っています。
男女問わず、すべての従業員が安心して働ける職場。そういう環境を目指すのであれば、少なくとも社内においては、どんな価値観の女性であっても「性的に不快だ」と感じるような空気を排除する意識が必要だと、私は考えています。
もちろん、完璧はありません。いくら気をつけていても、ミスや誤解が生じることはあります。
ただ、そのときにすぐに軌道修正できる感性と誠実さがあるかどうか。それこそが、組織の文化を形作っていくのではないでしょうか。
まとめ:今の時代に求められる感性とは
あらためて、マルちゃん赤いきつねのCM動画を、もう一度ご覧になってみてください。
「全然問題ないじゃん」と感じるのも自由ですし、「やっぱりなんか気持ち悪い」と感じるのもまた自然な感覚です。
大切なのは、そう感じる人が社内にいる可能性を、経営者や管理職が想像し、その感性に寄り添う努力をすることではないかと思うのです。
皆さんは、どう思われますか?
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当社の「従業員」の定義
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