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「恥」と「悲劇感」を武器にした驚異の自走型マネジメント|藤田晋氏が提唱するZ世代のマネジメント法

  • 公開日:

1. 若者を動かす”サイバーエージェント流”新しいマネジメント手法とは?

サイバーエージェント社長の藤田晋氏が、あるインタビューの中でこんなことをおっしゃっていました。

今のZ世代の若者は、「大きなビジョンを掲げてそれを成し遂げたいと思える環境を作る」よりも「未達に対するカッコ悪さや、未達であることで周りに迷惑をかけてしまうこと、また周りからの冷たい反応」など、つまり「悲劇感を感じさせる」方が、圧倒的に自走する

つまり、今の若者は、何かを成し遂げたい「欲」よりも、何かができなかったときの「恥」を刺激し与えたほうが、自ら動き頑張る、と。

藤田晋氏は私と同世代の51歳ですが、すでに私たちが生まれ育った時代は飽食の時代でハングリー状態で育っていないので、お金持ちになりたいとか、美味しいご飯をお腹いっぱい食べたいとか、そういう「なりたいもの」「成し遂げたい」こと、言い換えると夢や理想や志しでモチベーションを維持し続けることが難しくなるとおっしゃっていました。

一方で、下から炙られるような状態の時のほうが、明らかにがんばり続けられることがわかってきたとのこと。 自分もそうだし、今の若者は特にそうである、と。

2. 成功と恥の間で揺れる経営者たちの葛藤

若者を自走させるためのマネジメントは、「恥や悲劇感」がポイントである。

この話を聞いて、皆さんはどう思われるでしょうか?

この藤田晋氏の話は、ある意味で真実だと思いますが、これを小さな会社の経営者が真に受けて自社のマネジメントに取り入れることは諸刃の剣だと私は考えています。

今のサイバーエージェントと、創業当初のサイバーエージェントでは、そこで働く人の目線で見ると、もう全く違う企業です。

誰も知らないどこの馬の骨かもわからない、成長するのか潰れるのかも分からないそんな無名企業だった25年前のサイバーエージェント。 それに対して、押しも押されぬ人気企業で東証プライム市場に上場している現在のサイバーエージェント。

整っているものは何もなく労働条件も大手企業に劣っていて、夢や志だけがあった時代に入ってくる人材と、あらゆるものが整っていて、他企業よりもいい条件が当たり前のようにある現代に入ってくる人材は、そもそも根本から違います。

3. 新たなリーダーシップ像と変化する価値観

そして藤田晋氏は、近い将来社長職の引退を考えていて、本人が自分でも言っているように、これ以上何かを成し遂げたいとか、さらに大きなお金を手に入れたいとか、そういう欲求で自分のモチベーションが維持できないような状態に変化してきているわけですね。

湯水のようにお金を使い続けたとしても死ぬ前で使い切れないくらいにお金があるという状態になった時、「夢や志」では頑張れなくなってしまう(頑張らなくても十分に豊かな生活を楽しめる)人と、それでももっと大きな夢や志を描いて、現在の自分がいる環境との差を感じて「自分がいるべき場所はこんなところじゃない」という強烈な不足感、欠乏感から頑張り続ける人と、二通りに分かれます。
後者で代表的な著名人は、稲盛和夫氏、孫正義氏、柳井正氏などでしょう。

藤田晋氏は、昔の印象では、いい意味での強烈な欠乏感からいい意味でギラギラしていて夢に向かって前進していた印象がありましたが、社長引退を宣言してからでしょうか、めちゃくちゃ丸くなって良くも悪くもおっとりした印象を受けるようになりました。 昔のギラギラ感は、最近のインタビューなどでは全く感じられません。

それでも、日本を代表する上場企業の創業社長として、自分の事業を後進に引き継いでいくため、自分のような能力がない人にでも引き継げるような会社にしなければならないという使命感から、もうひと頑張りしているという印象ですが、どちらかというと、いくつかの上場日本企業(ニデック・ユニクロ・ソフトバンクなど)で創業社長が引き継ぎに事実上失敗しているという事例も知っているでしょうから、自分も失敗して「恥」をかきたくない、そして引き継ぎが上手にできずに誰かに「迷惑」をかけたくない、という「悲劇感」でかきたてられてモチベーションを維持している、ということなのだと思います。

4. 組織の未来を支える「恥と悲劇感」の可能性

ということで、お金や各種環境など、さまざまなものが整っていて、ただただ美味しいものを食べられてそれなりの贅沢もできるという状況の中で生きている人(それはスポーツ選手も一緒です)の中では、自分が目指したい世界への強烈な引力を持っているような人でない限り、「恥や悲劇感」でマネジメントをするのが、ひとつの正解ということです。

現在のサッカーJ1リーグで一位のFC町田ゼルビアは、名門青森山田高校のサッカー部を28年率いてきた名監督黒田剛氏を昨年招へいしてから一気に強くなったチームですが、その黒田監督がやっているのが、この「悲劇感」によるマネジメントです。

日本のトップチームのマネジメントでも、選手一人ひとりが、自分が目指したい世界への強烈な引力を持っていないため、ワールドカップを目指そうとか、そういう「夢」や「志」でモチベートしようとしても選手たちは自走せず、一方で「恥」をかきたくない、誰かに「迷惑」をかけたくないという気持ちを刺激するような仕組みを入れることで、選手たちは自走するようになるのだといいます。

2シーズン前FC町田セルビアは、J2で22チーム中15位だったのに、黒田監督が就任直後にいきなりJ2で優勝。そしてJ1昇格したばかりの今季は目下首位を走っています。

FC町田セルビアのオーナー企業はサイバーエージェントですから、藤田晋氏はそのマネジメント手法に大きな影響を受けているのは間違いありません。

しかし、想像してみてください。 大谷翔平が、そういうマネジメントが入った組織で積極的に頑張りたいと思えるでしょうか。

自分のありたい姿と、現在の自分との差から生まれる強烈な不足感・欠乏感からくる動機と、悲劇感という、恥をかきたくない、惨めな思いをしたくないというものからくる動機。

皆さんは、どっちのほうが頑張り続けられますか?

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