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知床遊覧船の経営から考える、従業員満足度と事故の構造的問題

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連日、知床遊覧船関連のニュースが飛び込んできますね。まだ行方不明の方も多く、私(藤原)自身もこうして話題にするだけでも胸が苦しくなります。

日を追う毎に、いろんなことが明らかになってきますね。
今のところすべてのメディアの論調は、「KAZUⅠ(カズワン)」運行会社の知床遊覧船という会社のずさんな対応や経営体制を批判するものになっています。

当然と言えば当然ではありますが、事故の当事者(知床遊覧船と社長の桂田氏)だけを一方的に責め立てるメディアの論調は、どこか違和感と既視感があります。

おそらくこの当事者以外にも、責任がある組織や人がいるはずですが、そこに目を向けさせないためにも、誰もが分かりやすい悪者を徹底的に叩くやり方は、こうした事件や事故が起こるたびに使われる手法で、ここに日本的システムの闇があると感じるのは、私だけでは無いでしょう。

この大惨事のすべての責任は、運行会社だけにあるのか?

知床遊覧船の運営会社以外にも、責任を感じるべき当事者がいる

メディアを通じて流れてくる情報を聞く限りは、この会社の経営体制が今回の大惨事を引き起こした主原因だというのは間違いないと私(藤原)も思うのですが、これだけの被害者を出してしまった根本原因は、「国」にも大いにあるのではないかと感じています。

それは、「船は沈む可能性がある」「船から人は落ちる可能性がある」という前提で法整備ができていなかったということ。

これは、海や船のことを知る専門家なら誰もが口には出さずともわかっていることであると、海のことをよく知る私の知人は言います。

国土交通大臣の斉藤鉄夫氏は、知床遊覧船のことを「あり得ない」と批判し、社長の桂田氏に対しても「当事者意識、責任感が欠如している」と指摘していましたが、当事者意識と責任感が最も欠如しているのは一体誰なのでしょうか?
批判の矛先が自分に向かないように腹黒く仕向けているか、本当に天然のオトボケで自分は当事者ではないと思いこんでしまっているのか、そのどちらかでしょう。

北海道の海を知る人なら、誰もが知っている人命救助の真実

救命胴衣(ライフジャケット)や救命浮器は、船が沈んだりしたときに、人命を救うために装備が義務付けられているものですが、それは「船は沈む可能性がある」という前提があるから義務付けられているわけです。

しかし、水温が5度になるような北の海では、人命を救うものとしてはほぼ役に立たないということは、海のことをよく知る人であれば、誰もが知っている常識だと、私の知人は声を大にして言っています。

水温が5度になるような海では、仮に救命胴衣や救命浮器があっても、人間はあっという間に低体温症になり数分で失神(意識不明)し、失神すればそのまま溺れて、生命が助かる可能性は限りなくゼロに近くなるということは、海に携わる人であれば常識中の常識だというのです。

そのような状況で救命装備を考えた時に必要なものは、救命いかだのようなもので、船が沈んでも人間が水に浸からないようにするための物が必要で、それを法律で義務付けなければいけないわけです。

沖縄を航行する船も、北海道を航行する船も同じ法律?

今回使われていた大きさの観光船には、救命いかだを積むことは法律による義務付けはされていませんでした。
そして、なんと沖縄を航行する観光船も、北海道を航行する観光船も同じ法律が適用されているのです。
本来であれば、水温によって搭載義務を課す救命器具が違うはずなのに。

救命胴衣や救命浮器で人命を救う事ができるのは、水温が20度とか25度以上の海に限られるのに、北の海を航行する船にそれらが義務付けられていないのは、つまり国は「水に落ちたら高確率で生存できない」ということを知りながら、法規制をしなかったということで、これが『これだけの被害者を出してしまった根本原因は、「国」にも大いにあるのではないか』と感じた理由です。

まさか、斉藤国交相は、この事実を事前に知らなかったわけでは無いでしょう。
もし知らなかったのだとしたら、それこそ「当事者意識、責任感が欠如している」と批判されてしかるべきです。

周りの観光船事業者も、この事実は知っていたはず

そして、知床遊覧船以外の会社の観光船の会社の人達も、そのことは絶対に知っているはずで、それを知っているから「法規制されていないが、自社の観光船には救命いかだを積んでいる」という企業姿勢なら素晴らしい会社だと言えるわけですが、そうでない場合は、知床遊覧船という会社に対して安易な批判はできず、また国も他人事のようにこの会社を批判できないと、私は思うのです。

ただ、言い分はあるでしょう。

「うちの船は悪天候で船は出さないし、安全な航行をしないから絶対に沈むことはない」と。

しかし、そういう言い分が出るとしたら、そこに「船は沈む可能性がある」「船から人は落ちる可能性がある」という前提が欠落していることになります。

海が荒れていようがいなかろうが、水温の低い北の海に落ちたら、生命が助かる可能性は落ちて数分以内に救助されない限りほぼゼロになるという現実は、海で働く人ならは全員が知っている事実です。

救命胴衣や救命浮器では、残念ながらこの季節の北海道の海に人が落ちたらほとんどの人は10分持たずに失神するので、これがそもそも今回の大惨事になった根本原因である可能性があるのです。

想定外を想定しておくことが、経営者やリーダーの重大任務

私は日刊で発行しているメルマガでも、もう何度となく言い続けてきました。
経営とは想定外のことが起こることを想定しておく営みだ、と。

これは小さな会社の経営でも、大きな会社の経営でも、国の経営でも同じことがいえます。

もちろん、大惨事の引き金を引いたのは知床遊覧船の企業体制によるものですので、そこの責任は重大です。厳しく責められて当然です。

しかし、国の法規制の現状や、他の観光船運行企業に忖度しているのか、メディアはこの事実を伝えません。
救命いかだの搭載が法律によって義務付けられていたら、助かった人がいたかもしれないという事実を。

 

さて、海の専門家でも船の専門家でもない私は、このことに言及したくてこの話を書き始めたわけではありません。
ただ前提としてこの事実を理解しておかなければ話を前に進めることができないため触れた、というだけです。

組織の従業員満足度と、組織の構造的問題について

ES(従業員満足度)の低い組織では、当たり前のことが放置される

ここからが本題です。

私が、あらためて言及したいことは、ES(従業員満足度・従業員エンゲージメント)が、こうした大惨事に大きく大きく関係しているということを、世の中の経営者やリーダー全員に知っておいてほしい、ということです。

「KAZUⅠ(カズワン)」の船長である豊田徳幸さんが、今年3月のフェイスブックの投稿で「ブラック企業で右往左往です」と書き込んでいることが、いくつかのメディアから伝えられています。

残念ながら、これは知床遊覧船に限った話ではありません。
多くの観光事業者では、経営者がESなど全く考えない経営をしています。

ES(従業員満足度・従業員エンゲージメント)の低い組織では、
「本当は誰もが分かっている事実」
「本当は法律を守っているだけでは意味がないこと」
を、積極的にスタッフが会社に進言する事は絶対にありません

その結果、最悪の事態を招くまで、その体制を誰もが放置し、それがまるで当たり前かのような空気が社内に醸成されます。

救命胴衣や救命浮器は、この時期の北海道の海では、命を救う目的では全く意味のない装備であることは、プロとしてここで仕事をしている誰もが知っていたはずなのに、それを、上司や会社に強く進言できなかった。

この組織で起こったことは対岸の火事ではない

繰り返します。

ES(従業員満足度・従業員エンゲージメント)の低い組織では、
「本当は誰もが分かっている事実」

「本当は法律を守っているだけでは意味がないこと」

を、積極的にスタッフが会社に進言する事は絶対にありません。

そしてその空気のおかしさに新入社員が気づいて先輩社員にそのことを進言したとしても、ESの低い組織で働き続ける先輩社員は、そのことを経営者に伝えるということはせず、新入社員を諫めるという行動を取ってしまいます

今回の知床遊覧船の事故でいうと
「本当は誰もが分かっている事実」とは、救命いかだがなければ海に落ちたらほぼ助からないということで、
「本当は法律を守っているだけでは意味がないこと」とは、救命胴衣や救命浮器は現実の救命にはほぼ意味がないということですね。

おそらく、ESが相当低い状態だったと思われる知床遊覧船はもちろんですが、それ以外の観光船の運行会社や、全国の人の命を預かるレジャー施設を運営する会社でも、私が提唱するES基準が低い場合、同じことが社内で起こっているだろうことが容易に想像ができます。

知床遊覧船とその他のESの低い会社との違いは、あくまでもそれが、大きな事故として露呈するかしないかの違いに過ぎず、大きな問題を引き起こす可能性のある問題の根っこは、これからもそれらの企業に残り続けることになります。

ES(従業員満足度)の高い組織と低い組織を見分ける基準のひとつ

逆にESの高い組織では、
「本当は誰もが分かっている事実」
「本当は法律を守っているだけでは意味がないこと」
を、積極的にスタッフが会社に進言し、その進言を経営陣は真摯に受け止めます。

北の海を航行する観光船事業者の中で、法律では義務付けられていないけど救命いかだを積んでいるという観光船があれば、そこはESが高い可能性があります。
(無論、それだけでESが高いと言い切ることはできませんが)

人も企業もミスや間違いを犯すもの。大切なのはその先。

今回の知床遊覧船の大惨事は、あくまでも氷山の一角であり、それが露呈したに過ぎないと私は考えています。

ESの低い組織では、こうした大惨事に繋がる問題の根っこが、今日も明日もそして一年後も、育ち続けているのだということを私たちは知っておかねばなりません。

ESを高める経営は、世の中から悲惨な事故をなくし、自社のミスや間違いによって悲しい気持ちになるお客様をなくし、健全な社会を作るためにも、本当に重要なことなのです。

ぜひ、この記事を読んでくださった方は、このことを積極的にいろんなところで、いろんな人に伝えていってください。

私たちは、知床遊覧船の事故を他山の石とせねばなりません。

人間は、ミスや間違いを犯す生き物です。
人間が集まって運営する会社という組織も、当然ミスや間違いを犯すものです。

それを前提にしたとき、ESは経営に欠かせないものの一つであることが分かるでしょう。

従業員満足度を高めることを経営目的の一つにする

ESを経営の目的の一つにしましょうと私は言い続けています。

これは従業員一人ひとりが幸せな状態で働くことができるようになることで、社会から悲惨な事故や、致命的な不正をゼロに近づけていくためでもあります。

「本当は誰もが分かっている事実」
「本当は法律を守っているだけでは意味がないこと」
これらをどう扱うかは、ESの高い組織と低い組織では天と地ほどの差が出るのです。

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そして経営トップや役員も従業員の一人であり、そこに優劣はありません。

一般的には、経営者に「従う」という意味で従業員という言葉が使われていますが、
当社では理念やクレドに「従う」という意味で
経営トップも含めて関係者全員を従業員と定義しているのです。

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