経営者の危険な思い込み
従業員は、一度入社したらよほどのことがない限りずっと付いてきてくれるはずだ。
多くの会社の経営者は、大なり小なりこのような認識を無意識に持ってしまっています。
幹部社員や信頼している社員が辞意を示したり、またなんの不満も言わずに働き続けている人が、ある時急に待遇面の改善を強く求めてきたりした時に、「なぜ?」という言葉が自分の脳内に浮かぶようであれば、従業員エンゲージメントを楽観的に捉えてしまっていたと言わざるをえません。
つまり、「一度入社したらよほどのことがない限りずっと付いてきてくれるはずだ」と思ってしまっているということです。
ある日突然、長年連れ添ってきた配偶者から「もうあなたには付いていけません」と言われて、「え?なぜ?」とうろたえるのと、全く同じ構図です。
継続的なエンゲージメントの醸成は、組織繁栄の生命線
そもそも、常日頃から、ES(従業員満足度・従業員エンゲージメント・ウェルビーイング)を意識した組織経営をしていたら、辞意を示すような社員は、そのずいぶん前からそのことが分かっているはずですし、待遇の改善を求めてくるような人も同様で、ずいぶん前から分かるものです。
ES調査や、エンゲージメントサーベイの類のものを頼っているような経営者には、この感覚はピンとこないかと思いますが、ピンと来ない人は「マズイ」と認識してください。
変化する従業員の心:ウェルビーイングを継続して高めるため
人間は誰しも感情のある生き物で、その感情は移ろいゆくものです。
入社時に意欲が高かった人でも、その意欲も含めた全ての感情はどんどん変化していきます。
諸行無常。
世に変わらないものはありません。唯一の例外は「世に変わらぬものはない」という心理のみが変わらないもので、それ以外のものは全て変わります。
つまり、意欲やウェルビーイング、エンゲージメントの類のものは、現状でかなり高いレベルにあったとしても、時間の経過と共に大きく下がる可能性もあれば、大きく上る可能性もあるということです。
優秀な人材の採用だけでは不十分
近年、採用に力を入れる企業が増えてきています。理念やクレドなどを入社前から応募者に共有し、価値観と文化社風が合う人のみを採用するという企業が増えてきています。それはとてもいいことです。
しかし、それで自社にとって良い人材を採用することができたら、それだけで組織に良い影響があると思って安心している企業は、まだまだとても多いというのが現実です。
そういう企業の経営者が、ある日突然辞意を示す従業員や、急に待遇に文句を言い始める従業員の存在にうろたえ、「なぜあいつはそうなってしまったんだ?」と他責思考をしてしまいます。
従業員にとっては、「ある日突然」でもなければ「急」でもないのです。
人材採用ビジネスの罠
「本当にいい人材を採用することができたら、それだけで組織は大きく変わります」
さまざまな人材採用支援会社や、人事コンサルタント、採用代行サービス会社、求人広告代理店などが、同じようなことを異口同音におっしゃいます。
今から約20年前、経営者としても人間としてもまだまだ未熟だった私は、こうした人事や採用の専門家たちのメッセージを聞き、それを信じて疑うことはありませんでした。
人材採用ビジネスの市場規模は莫大で、大小様々な企業が積極的に取り組んでいます。彼らのビジネスの全てを否定するつもりは毛頭ありませんが、少なくない企業が、求人広告やセミナー・コンサルなど、自社の商品やサービスが売れればそれでいいと思って、活動をしているという現実があります。
そして甘い言葉とともに、求人広告や求人ナビ、セミナーやコンサルなどを売り込まれ、一定数の企業の方がそれらの餌食となります。
求人広告に大枚を払い、広告代理店の営業マンの言うことを忠実に守れば、たくさんの応募者が来ますし、その中から良さそうな人材を採用することもできます。
その結果、採用した人材が、組織を変えるような活躍をして会社のエースに育っていく。求人広告を出し続けている限り、そうした人材を次から次へと採用できるようになって、会社経営が本当に楽になった。
そんな経験をされたことがある人はいらっしゃいますか?
もし、いい人材を採用するために力を入れたら、それだけで組織が劇的に良くなったという方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。
私の知る限り、そのような会社は一社もありません。
真の組織改革:採用強化の先にあるもの
自社にとって良い人材を採用することができたら、それだけで組織に良い影響があると思って安心している企業は、まだまだとても多いというのが現実なんですね。残念ながら。
この残念な思考から抜け出すことができない人は、無自覚で「従業員は、一度入社したらよほどのことがない限りずっと付いてきてくれるはずだ」と思いこんでいて、そう思いこんでいるからこそ、採用した人材が活躍しなかったり定着しなかったりした時に、その採用した人が悪いと考えるか、広告代理店の営業マンに文句を言うか、そんなレベルでの言動を繰り返します。
そもそも、いい人材を採用するために力を入れるなら、その前にやるべきことがあるということ。
この記事を読み込んで、自分の仕事に真摯に向き合うような方々には、この先の話は釈迦に説法ですね。
この先の話も聞きたい!という方は、私のメールマガジンへいつでもどうぞ。
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当社の「従業員」の定義
当社では「従業員」を“理念やクレドに従う全スタッフ”と定義しています。
つまり一般的な社員だけでなく、アルバイトさん、パートさん、
そして経営トップや役員も従業員の一人であり、そこに優劣はありません。
一般的には、経営者に「従う」という意味で従業員という言葉が使われていますが、
当社では理念やクレドに「従う」という意味で、
経営トップも含めて関係者全員を従業員と定義しているのです。
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