はじめに——採用の悩みは、じつは「経営の問い」である
どの業界も人手不足が深刻な今、クリニックも例外ではありません。スタッフが定着しない、応募が来ない、来ても採用後にすぐ辞めてしまう……。
こうした悩みを抱える院長先生から、求人の書き方についてご質問をいただく機会が増えています。今回は、主婦層に特化した求人サイト「しゅふJOB」の活用を検討されているある美容室オーナーからのご質問をもとに、業種を超えて共通する採用の本質についてお伝えします。
「しゅふJOB」とはどんな媒体か
「しゅふJOB」は、家事や育児を生活の軸に置きながらも、どこかに所属して働きたいと考えている主婦・主夫層に特化した求人サイトです。
私自身が経営する事業会社でも活用しており、正しく使えばたしかな効果があります。ただし、どの求人サイトを使う場合にも共通して言えることがあります。
「自社が採用したい人物像」と「求職者が働きたい会社像」の一致があって、はじめて機能する。
これが採用の本質です。この前提を無視して「便利そうな媒体」を選んでも、採用はうまくいきません。
料金プランは「採用課金」一択
しゅふJOBには「掲載課金」「応募課金」「採用課金」の3つのプランがあります。
営業担当者から「掲載課金プランがコスパよいですよ」と勧められることがありますが、採用課金プラン一択をおすすめします。
理由は明確です。
- 掲載・応募課金プラン:応募が来るほど費用が発生するため、採用面接の精度が低く、ミスマッチのまま採用し続ける会社ほど、求人サイト側の「上顧客」になる構造です。
- 採用課金プラン:実際に採用が決まったときだけ費用が発生する。面接の精度が高く、入社後の定着率が高い組織ほど、一人あたりの採用コストが下がっていく仕組みです。
採用とは「人を選ぶこと」ではなく、「お互いを選び合うこと」です。そのプロセスを大切にするからこそ、採用課金プランが機能します。
求人原稿は「ラブレター」である
では、求人原稿にはどう書けばよいのか。
多くのクリニックの求人を見ると、次のような書き方が目立ちます。
- 「週3日〜OK」
- 「シフト相談可」
- 「子育て中の方歓迎」
もちろん、条件の記載は必要です。しかし条件だけでは横並びになる。求職者は何十件もの求人を見比べています。条件面だけで目に留まることは、ほぼありません。
求人原稿に必要なのは、「なぜ自社ではそれが可能なのか」という背景と理由です。
たとえば、「お子さんの急な発熱でお休みする場合は遠慮なくご連絡ください。スタッフ同士が自然にフォローし合える体制を日頃からつくっています」と書いてある求人と、「急なお休みにも対応します」と書いてある求人とでは、読んだ人の安心感がまったく違います。
前者には、その職場の空気が見える。後者は制度の説明でしかない。
求人原稿とは、まだ会ったこともない相手へのラブレターです。 スペックを並べるのではなく、「あなたのような状況にある方に来てほしい。うちにはその理由がある」と語りかけるように書く。それが求人原稿の本質です。
主婦・子育て中スタッフの採用で意識すること
主婦層、とくに子育て中のスタッフを採用する際に、ひとつ根本的な姿勢の問いがあります。
もし「主婦だから安く使える」「融通が利く」という発想が少しでもあるとしたら——それは求職者に見透かされます。
主婦の方々は、限られた時間の中で家庭をやりくりするプロです。時間の価値を誰よりも知っている。その方々が「ここで働きたい」と思う組織であるためには、「短い時間でも、あなたの仕事には価値がある」ということを、言葉だけでなく待遇と日常のコミュニケーションで示し続けることが必要です。
「10倍返し」の発想——従業員満足度が高い組織の共通点
ここで、採用と従業員満足度をつなぐ重要な考え方をお伝えします。
私が考える従業員満足度の高い組織には、共通した循環があります。
会社は、スタッフが投じてくれた時間と労力の「10倍の価値」を返そうとする。
スタッフもまた、受け取った報酬の「10倍の価値」を仕事で返そうとする。
この「10倍」は、給与だけの話ではありません。むしろ、内的報酬——仕事を通じた手応え、成長、誇り、承認、つながり——がその中心です。
逆に「働きに見合った報酬を払う」という発想の会社には、「報酬に見合った仕事しかしない」というマインドの人が集まります。搾取思考の会社には、搾取思考の求職者が集まる。これは構造的な必然です。
「海」を見せる求人原稿——サン=テグジュペリの言葉から
フランスの作家サン=テグジュペリは、こんな言葉を残しています。
船を造りたいなら、人に木材を集めさせたり仕事を割り振ったりするのではなく、果てしなく広い海への憧れを教えよ。
求人原稿に置き換えると、こういうことです。
「どんな仕事をするか」だけを書くのは、船を造るための木材を集める段取りだけを説明しているようなもの。それは必要ですが、それだけでは人は動きません。
大切なのは、その仕事の先にある「海」を見せることです。
クリニックで言えば、こんなことかもしれません。
- 患者さんから「ありがとう」と言われる瞬間
- ブランクを乗り越えて、もう一度プロとして働けている実感
- 限られた時間の中でも、誰かの役に立てている自己肯定感
- 子どもを保育園に迎えに行く前の時間まで、充実して働けている日常
壮大な経営理念を掲げる必要はありません。むしろ、「誰かの役に立てた」という小さな実感の積み重ねこそが、多くの人にとっての「海への憧れ」になります。
採用面接が、最終的な鍵を握る
求人原稿で「自分の言葉」を書けるようになっても、面接の場でそれを体現できなければ意味がありません。
求人原稿はラブレター、面接はその「初めて会う日」です。ラブレターに書いたことが本物かどうか、求職者はちゃんと見ています。
採用面接の具体的な強化方法については、別途取り上げます。ご関心のある院長先生は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ——求人の書き方は、経営姿勢そのものを問い直すこと
「どう書けば人が来るか」というテクニックの話ではなく、「自分のクリニックは、来てくれた人に何を返せるのか」という本質の問いに向き合うこと。
ここが曖昧なまま、いくら文面を工夫しても、入職後すぐに化けの皮が剥がれます。逆に、ここが明確であれば、求人原稿は自然と「自分の言葉」になります。
ぜひ一度、こう書き出してみてください。
「うちのクリニックで働くスタッフは、時間と労力を投じた10倍の何を受け取れるのか」
それがそのまま、最も強い求人原稿の素材になるはずです。
関連記事:外的報酬・内的報酬についてさらに深く学ぶ
本文中で触れた「内的報酬・外的報酬」についての詳しい解説は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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