1997年に創業した私の事業では、2005年に起こった組織の崩壊を経て、遅まきながら企業理念に魂が吹き込まれた。その理念と現場の仕事を繋ぐものとして「クレド経営」を導入した。
しかし、すでに述べてきたように、クレド導入から日常の仕事の中に浸透するような運用が確立するまでには、多くの困難があった。
従業員満足度なんて言葉を一瞬たりとも考えずに、利益至上主義で突っ走ってきた人間が、ある日突然、理念だとかクレドだとか理想論を掲げたところで、どんな言葉も従業員の心には響かない。そのような厳しい前提があるところからの、クレド経営のスタートだったが、そこからスタートすることができたおかげで、期せずして骨太なクレド経営の基礎が自社内に醸成されることになった。
もともとは、私が経営する企業の経営力と企業力を強化し、従業員満足度を高めるために始めたクレド経営で、それ以上のことは何も考えていなかった。ところが、何気なく書いたクレドに関するブログ記事を読んでくれた取引先企業の経営者や、一般企業の人事担当者などから、「クレド開発と浸透を手伝ってもらえないだろうか?」という依頼が入り始めるようになった。
ブログ記事を書いたのが、2010年(平成22年)。お問い合わせや開発支援依頼などが入り始めたのが、その翌年の2011年のことだった。しかし、この時はまだ従業員満足度研究所も設立していなかったときのこと。クレド支援を事業化することも考えていなければ、それによってさまざまな企業に価値を提供できるというイメージを持ったこともない。そのような状態で無責任に仕事を受けるわけにもいかないだろう、というのが当時の私の判断だった。
もし、クレド支援を仕事として受けるとしたら、全身全霊で対応せねばならない。そのくらいクレドの開発と浸透は簡単なことではないと、自社にクレド経営を導入した経験からはっきりと分かっていたため、その後も定期的に入り続ける依頼には、丁重にお断するということを繰り返していった。
何も専門家でもない私が立たなくても、世の中にはクレドの開発や導入を支援する企業もあるし、クレド作成を手伝うコンサルタントもいるというではないか。そのように自分に言い聞かせていたのだが、実際は日々の忙しさにかまけて、少なくないお声とご期待に対して真正面から向き合うことを避けていたのだと思うと恥ずかしい。
一方で、その間も自分が経営する企業内では、クレド経営が従業員満足度を高めながら業績にも連動してく柱として確固たるものとして育ち続けていった。
それをどこかで見聞きした人たちから、また問い合わせが入るようになった。
「コンサルタントに頼んでクレドを作ってもらったんです。完成して導入はしたんです。でも、うまくいかなくて。藤原さんの企業と何が違うのか、そのヒントだけでも教えてもらうことはできませんか?」
従業員満足度を高めるための軸としても欠かすことのできない「クレド経営」これだけ多くの人や企業から支援を求められているにも関わらず、いまだに価値提供ができていない自分に腹が立った。
2021年(令和3年)最初のお問い合わせをいただいてから、10年という月日が流れていた。しかしこの10年間の自らの企業経営経験から、10年前には確立できていなかったクレド経営を成功に導くための考え方と法則を普遍化することができていたのである。
クレドは作って導入すれば良いわけではない。クレド経営を導入すれば、それだけでザ・リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンのような組織に近づけるのではないかという淡い期待を抱いている企業もあるが、そんな甘いものではない。
しかし、正しい考え方を身につけ、正しいプロセスで作成し、正しく導入して焦らずに時間をかけて浸透させていけば、クレド経営がもたらす波及効果は計り知れない。
組織づくりに悩むすべての企業に、少なくない価値提供ができるに違いない。私自身がトライアンドエラーを繰り返してきた経験を、すべて伝えることができれば、多くの企業の従業員満足度が高まり、そして大きく業績も向上させることができるだろう。
そして、2021年3月。クレド開発・浸透支援事業が発足したのである。
当社の「従業員」の定義
当社では「従業員」を“理念やクレドに従う全スタッフ”と定義しています。
つまり一般的な社員だけでなく、アルバイトさん、パートさん、
そして経営トップや役員も従業員の一人であり、そこに優劣はありません。
一般的には、経営者に「従う」という意味で従業員という言葉が使われていますが、
当社では理念やクレドに「従う」という意味で、
経営トップも含めて関係者全員を従業員と定義しているのです。
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