従業員満足度研究所を立ち上げようと決めたとき、最初から「研究所をつくろう」と思っていたわけではない。むしろ、その逆だった。
ただ、自分の過去の経営を、もう二度と繰り返したくなかった。仲間を疲弊させ、心をすり減らし、それでも「結果が出ているから正しい」と思い込んでいた、あの頃の自分を否定したかった。
自分が経営する事業会社で起きた組織崩壊は、決して特別な出来事ではない。同じようなことは、日本中の会社で、形を変えて起きている。そう気づくようになったのは、日刊メールマガジンを通じて、さまざまな経営者や働く人たちの声に触れるようになってからだった。
「社員が定着しない」
「やる気のある人材が育たない」
「評価制度を整えても、空気がよくならない」
「頑張っているのに、なぜか報われない」
そうした悩みは、業種や規模を問わず、驚くほど共通していた。
私は、何か特別なノウハウを持っていたわけではない。ただ、自分の失敗と向き合い、そこから逃げずに考え続けてきただけだ。そして、自社で試し、壊れ、やり直し、少しずつ形にしてきただけだった。
それでも、メールマガジンを読んでくださっている方々から、少しずつ相談が届くようになった。
「藤原さんの書いていることは、きれいごとではなく、現場の話ですよね」
「うちの会社でも、同じようなことが起きています」
「一度、直接話を聞いてもらえませんか」
最初は、個別に話を聞くだけだった。アドバイスをするというよりも、相手の話を聞き、自分の経験をそのまま返す。それだけだった。
だが、相談は次第に増えていった。個人の悩みではなく、「組織としてどう向き合えばいいのか」という問いに変わっていった。
そのとき、私はようやく気づいた。自分がこれまでやってきたことは、単なる自社の経営改善ではなく、「働くこと」と「組織」に対する問いそのものだったのだと。
個別の会社を救うことよりも、同じような失敗が繰り返される構造そのものに向き合わなければ意味がない。そう考えるようになった。
従業員満足度という言葉を、単なる指標や流行語として扱いたくなかった。「福利厚生を整えれば満足度が上がる、給料を上げれば人は幸せになる?」そうした短絡的な発想が、かつての自分を苦しめ、組織を壊したことを、私はよく知っている。
従業員満足度やエンゲージメントやウェルビーイングとは、結果であって、目的ではない。日々の言葉、態度、意思決定の積み重ねの先に、あとから立ち上がってくるものだ。
その考え方を、体系立てて伝えられる場所が必要だと思った。誰かの会社の中だけで完結するのではなく、もっと開かれた形で、共有できる場が必要だった。
そうして立ち上げたのが、従業員満足度研究所である。
研究所という名前をつけたのは、完成形を示す場所にしたくなかったからだ。正解を教える組織ではなく、問い続ける組織でありたかった。
働くとは何か。
組織とは何か。
人は、どんなときに前向きに力を発揮するのか。
これらの問いに対して、断定的な答えを出すつもりはない。むしろ、現場で起きているリアルな事実を持ち寄り、一緒に考え続ける。そんな場所でありたいと思っている。
従業員満足度研究所は、私の事業の一つではある。だが同時に、これまでの人生で積み上げてきた失敗や違和感を、社会に返すための器でもある。
働くことに違和感を抱えながら、それでも投げ出さずに踏みとどまっている人たち。組織をよくしたいと思いながら、どうすればいいのか分からずに立ち尽くしている経営者やリーダー。
そうした人たちと、同じ目線で言葉を交わせる場所をつくりたい。その思いだけで、私はこの研究所を続けている。
当社の「従業員」の定義
当社では「従業員」を“理念やクレドに従う全スタッフ”と定義しています。
つまり一般的な社員だけでなく、アルバイトさん、パートさん、
そして経営トップや役員も従業員の一人であり、そこに優劣はありません。
一般的には、経営者に「従う」という意味で従業員という言葉が使われていますが、
当社では理念やクレドに「従う」という意味で、
経営トップも含めて関係者全員を従業員と定義しているのです。
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